NMES強度とバランス訓練を読み解く|EMS研究ニュース 2026年8月

2026年8月(途中経過)に公開・発表されたEMS(Electrical Muscle Stimulation/骨格筋電気刺激)、NMES、FES関連の論文、特許、新商品・企業発表をまとめました。

基礎から確認したい方はEMSの教科書を、過去分を含む一覧はEMS業界ニュース一覧(年間ハブ)をご覧ください。

今月の要点

  • 論文・研究:3件。
  • 特許:0件。
  • 新商品・企業発表:0件。

第31週(8月1日〜8月2日)

論文・研究発表

NMES振幅の違いと大腿四頭筋トルク・筋厚の急性変化

公開日: 2026-08-02 掲載先: Physiotherapy Research International

概要: 健康な若年成人の左右脚を使い、NMESの振幅を変えたときの大腿四頭筋の等尺性トルクと筋厚の急性変化を比較したランダム化試験です。

解説:

NMESの強度は、現場では「本人が耐えられる範囲で上げていく」といった決め方をされることが多く、振幅をどこまで上げると出力や筋の反応がどれだけ変わるのか、という用量反応の部分は意外と整理されていません。左右の脚を使い分ける設計は、体格や皮膚の状態といった個人差の影響を抑えて、振幅の違いだけを取り出すための工夫です。

補足すると、振幅は刺激の大きさに関わる設定ですが、機器の表示レベルと実際に身体へ流れる電流は一致しません。電極の状態、皮膚のコンディション、インピーダンスによって変わります。

考察: 『強いほど効く』を検証する際は、体感レベルでなく実測出力と発生トルクを見る必要があります。急性の筋厚変化を長期の筋肥大と同一視しない点も重要です。

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第32週(8月3日〜8月9日)

論文・研究発表

足関節筋へのEMSを伴うバランス訓練と感覚の再重み付け

公開日: 2026-08-06 掲載先: Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation

概要: 健康な成人40名を、足関節周囲筋へのEMSを併用する群(20名)と併用しない群(20名)に分け、5分間のバランスボード訓練の前後で、視覚・前庭・体性感覚の使い分け(感覚の再重み付け)と姿勢制御の戦略がどう変わるかを比較した研究です。NTT人間情報研究所と北海道大学の共同研究にあたります。

解説:

感覚のフィードバックを補ってやるとバランスが改善する、という考え方は以前からあります。EMSの場合はそこに、不随意の収縮によって関節の動きを直接手助けするという性質が加わるため、感覚と運動の両方に働きかけている可能性がある。ただ、EMSを使ったバランス訓練が本当に「感覚の重みづけの変化」を引き起こしているのか、引き起こすとして姿勢制御のやり方をどう変えるのかは、はっきりしていませんでした。そこを切り分けようとしたのがこの研究です。

前提として、バランスは筋力だけで決まるものではありません。身体の傾きを捉える感覚入力と、それに対する反応の統合で成り立っています。EMSによる収縮の大きさだけを見ても、全体像はつかめないということです。

結果として、EMS併用群では訓練後に視覚への依存が高まり、足首中心ではなく股関節を使って上半身を安定させる方向へ姿勢戦略が寄る変化が見られました。足用EMSを「筋力」の物差しだけで評価しない視点が得られる一本です。

一方で、視覚依存が高まる方向の変化を、そのまま「バランスが良くなった」と読むのは早計でしょう。暗い場所や視界の悪い場面での姿勢制御を考えると、評価が分かれうる変化です。5分間の訓練直後の話であること、対象が健康な成人であること、そしてバランスボード訓練と併用した結果であることも含め、座ったまま通電するだけの使い方に置き換えられるものではありません。

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第33週(8月10日〜8月16日)

論文・研究発表

透析患者のサルコペニアにNMESを用いるSTIM-HD試験計画

公開日: 2026-08-11 掲載先: Trials

概要: 血液透析を受ける人のサルコペニアに対してNMESを検証するSTIM-HDランダム化比較試験の研究プロトコルです。現段階は結果ではなく計画公開です。

解説:

透析を受けている人にはサルコペニアが多く、身体機能や生活の質の低下と結びつくことが知られています。運動プログラムに効果があること自体は分かっているものの、実際には参加できない・参加を望まない人が大半で、代わりになる手段が求められてきました。NMESは自分で力を入れなくても筋収縮を起こせるため、運動の代わりになりうる刺激として期待されている。ただし、これまでの報告は規模が小さく、判断の根拠としては足りません。そこで人数を確保した試験を組んだ、というのがこの計画の背景です。透析中の時間を使う設計も、通院や生活の負担を増やさないための工夫といえます。

なお、サルコペニアは医学的な評価基準を伴う状態で、日常語としての「筋肉不足」とは意味が異なります。

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