骨格筋電気刺激 (Electrical Muscle Stimulation, EMS)

2025年5月5日

🧠 骨格筋電気刺激(EMS)とは

**骨格筋電気刺激(EMS: Electrical Muscle Stimulation)**とは、皮膚上から電気刺激を与えることで骨格筋を強制的に収縮させる技術です。
主にリハビリテーションやトレーニング、美容・健康促進の分野で用いられ、近年ではウェアラブル機器や家庭用EMS機器の普及により一般にも広く知られるようになっています。


⚙ EMSの仕組み

電気刺激の基本原理

EMSは、皮膚上に配置された電極を通じて電流を流し、筋肉を支配する運動神経に刺激を与えて筋収縮を起こす仕組みです。通常の随意運動とは異なり、意識とは無関係に筋肉を収縮させることが可能です。

主な刺激パラメータ

  • 周波数(Hz):筋収縮の速さ。低周波(20~50Hz)が多く用いられる。

  • パルス幅(μs):電流の持続時間。200〜400μs程度が一般的。

  • 出力強度(mA):筋肉を収縮させるための電流の強さ。感覚に応じて調整。

  • 波形:方形波や双方向波形が主流。刺激の快適性に関与。


🧬 EMSの効果とメカニズム

EMSによる筋収縮は、通常の運動時とは異なり、速筋線維(Type II)を優先的に動員する特徴があります。これは短時間で強い収縮を生み出すため、筋肥大や筋力維持に効果的とされています。

期待される主な効果

  • 筋肉量・筋力の維持・増強

  • 筋疲労の軽減(リカバリー目的)

  • 血流改善・むくみの軽減

  • 運動困難な高齢者・入院患者へのリハビリ活用


🩻 EMS機器の種類

家庭用EMS

  • 低周波中心。扱いやすく安全性重視。

  • 多くは管理医療機器または一般美容機器。

  • 例:SIXPAD、Dr. EMSなど

医療用EMS

  • より強力で詳細な設定が可能。

  • 医療機器認証(クラスIIまたはIII)を取得している必要あり。

  • リハビリテーション、片麻痺患者の機能回復に使用。


⚠ EMS使用時の注意点と禁忌

禁忌事項(使用を避けるべきケース)

  • 心臓ペースメーカーや植込み型電子機器使用者

  • 妊娠中の腹部や骨盤周辺部への使用

  • 癌、感染症、血栓のある部位

  • 火傷・皮膚疾患部位

使用上の注意

  • 長時間使用しすぎると筋肉に炎症や過緊張を引き起こす恐れがある

  • 使用中に痛みやしびれを感じたら中止する

  • 電極の貼付位置や出力調整を適切に行う


🔍 EMSと関連技術の比較

EMSとTENSの違い

比較項目 EMS TENS
主な目的 筋収縮 疼痛緩和
対象 骨格筋 感覚神経
使用感 強い収縮感 心地よい刺激

EMSとNMESの違い

NMES(神経筋電気刺激)は、EMSの医療特化版であり、リハビリ現場でより積極的に活用される技術です。**FES(機能的電気刺激)**という形で歩行補助などにも応用されます。


📜 法的分類と規制(日本)

日本国内では、EMS機器の分類は以下の通りです。

区分 用途 法的扱い
家庭用EMS 美容・健康 管理医療機器 or 雑貨扱い(効果表示制限あり)
医療用EMS 治療目的 医療機器(薬機法による承認必要)

医療効果を謳うためには薬機法による承認が必要です。無承認で「治療」「改善」などの文言を使用することは違法となる可能性があります。