222nm紫外線(Far-UVC)とは?除菌の仕組み・安全性・注意点を解説
こんにちは、むじょーです。
この記事はもともと2021年に「紫外線除菌ってどういう仕組みなんだろう」という素朴な興味で書いたものです。ただ、あれから5年たって状況がだいぶ変わりました。
特に大きいのが、UV-Cの安全基準が50年ぶりに改訂されたこと。
そして電気用品安全法の対象が変わったことです。この2つは、商品企画やマーケティングでUV除菌を扱う人にとってはかなり実務的な話なので、今回はそこを中心に全面的に書き直しました。
「222nmって安全らしいけど、広告でどこまで言っていいの?」というところが気になっている方に向けた内容です。
先に結論
- 222nm(Far-UVC)は、急性影響についての許容限界値が大幅に緩和された。ここは事実として引用できます
- ただし訴求で使えるのは基本的に「除菌」まで。「感染を防ぐ」は別の話です
- 国際基準(ACGIH)と国内基準(JIS)にはまだ差があるので、国内向けの表現は国内基準に合わせるのが無難
- 波長よりフィルターの質が本質。222nmを名乗っていても中身が違う製品はあり得ます
3分で押さえる紫外線除菌の基礎
紫外線とは、波長が100〜400nmの範囲の電磁波のことです。可視光線の紫色の外側にあるので「紫外線」、英語では ultraviolet、略してUVですね。
波長によってUV-A、UV-B、UV-Cに分類されます。このうちUV-C(200〜280nm)が強い殺菌作用を持ちますが、普段はオゾン層でブロックされて地上には届きません。

作用の仕方も、除菌液などとは違うそうです。アルコールやオゾンが細胞膜を破壊するのに対して、紫外線は細胞の中のDNAに直接作用して、増殖機能をなくすことで除菌を行います。
最も効率がいいのは260nm付近。DNAがこの波長を吸収しやすいから、というのが理由らしいです。

参照元:ニチバン 紫外線と除菌の仕組み
ここまでが前提です。DNAに作用するということは、菌だけでなく人体にも影響があるということ。従来のUV-C(254nm付近)の取り扱いに注意が必要なのは、この一点に尽きます。
2022年、UV-Cの安全基準が50年ぶりに変わった(ACGIH)
この記事で一番お伝えしたいのがここです。
紫外線の人体への曝露基準としては、ACGIH(アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)が勧告するTLV(許容限界値)が最も普及していて、日本産業規格もこの値を引用しています。1日8時間浴びても健康影響が出ないとされる線量、という位置づけです。
このUVC領域のTLVが、1970年代前半のデータを元に50年近く据え置かれていたのですが、2021年末から2022年頭にかけて222nmの値が大幅に引き上げられました。
| 222nmのTLV | 改訂前 | 改訂後 |
|---|---|---|
| 目 | 約22.9 mJ/cm² | 160 mJ/cm²(約7倍) |
| 皮膚 | 約22.9 mJ/cm² | 479 mJ/cm²(約20倍/目が保護されている条件下) |
数字だけ見ると地味ですが、50年ぶりに動いたという点にインパクトがあります。それだけ「222nmは他のUV-Cとは扱いが違う」というエビデンスが積み上がった、ということですね。
ただし国内基準はまだ動いていない
ここが実務上、地味に効いてきます。
国内のJIS Z 8812では、1日あたりの222nm紫外線の許容照射量は22mJ/cm²以下、かつ8時間を曝露時間の上限と規定されています。ACGIHの改訂を受けて、IEC・UL・JISといった各地域の国際規格でも許容値の見直しが進められる流れではありますが、「ACGIHが緩めたから国内でもOK」とはなりません。
国内向けの製品仕様や広告表現を組むときは、参照している基準がどちらなのかを必ず確認しておいたほうがいいと思います。
電気用品安全法(PSE)の対象も変わりました
もうひとつ、商品企画側が見落とせないのがこちら。
2021年12月28日付で電気用品安全法が改正され、殺菌灯を有する電気消毒器のうち、器体の外に直接殺菌灯の光線を照射する構造のものが規制対象に加わりました。安全性確保のための技術基準が追加され、警告表示が義務化されています。
2020年前後に、除菌能力ばかりが取り沙汰されて人にUV-Cの光が当たるような商品が市場に氾濫していた時期がありました。この改正はまさにそこへの対応です。企画中の製品が該当するかどうかは、早い段階で確認しておくべきポイントだと思います。
なぜ222nmだけ扱いが違うのか
個人的に一番おもしろいと思ったのが、この「なぜ」の部分です。
222nmは波長が短いぶん、タンパク質に強く吸収されて、皮膚の角質層や角膜の最表層より奥に届かないとされています。DNAに届く前に止まる、というイメージですね。
島根大学医学部とウシオ電機の研究では、ラットを使った試験で角膜炎を起こさない最大照射量が3,500〜5,000mJ/cm²の間にあることが示されました。TLVの100倍以上の照射量でも角膜障害は発生しないと推測される、という結果です。
さらに、その安全性のメカニズムとして、222nmは角膜上皮の最表層のみに到達し、その細胞は生理的な代謝サイクルの中で12時間以内に剥がれ落ちることが明らかにされています。仮にダメージを受けても、そこは「もうすぐ剥がれる細胞」だった、ということですね。ここまで機序が説明できるようになったからこそ、TLVの改訂につながったわけです。
本質は波長ではなくフィルター
ここが製品を見るときの一番のポイントだと思っています。
222nmを出すKrCl(クリプトンクロライド)エキシマランプは、実は222nm以外の波長も含んだ光を出します。230nmを超える不要な波長を光学フィルターで確実に除去できているかが、安全性を左右します。フィルターが不十分だと、結局は従来のUV-Cに近いものを浴びることになってしまう。
ウシオ電機のCare222が、専用の安全フィルター技術を前面に出しているのはそのためです。
逆に言うと、「222nm」という表示だけでは何も担保されないということでもあります。ここは模倣品や低品質品が入り込みやすいところなので、私も注意して見ているポイントです。
「安全」の意味を分けて考える
ここまで222nmのいい話が続いたので、バランスを取っておきます。
「皮膚や眼への急性影響が少ない」という研究結果と、
「あらゆる人が長時間浴び続けても問題がない」は、意味がまったく違います。
TLVはあくまで急性障害に関する許容限界値です。
66週間の長期曝露試験で皮膚の異常が見られなかったという報告など、長期側の研究も出てきてはいますが、実環境での長期・反復曝露については、まだ未解明な部分が残ります。
そして除菌性能のほうも、波長だけでは決まりません。
照射量、距離、時間、空気の流れ、遮蔽物、ランプのフィルター性能に左右されます。
試験室での不活化結果を、そのまま人がいる部屋の実効性へ置き換えることはできません。
とはいえ、実環境に近い検証も進んでいます。
部屋サイズのチャンバー試験では、換気3ACHの条件下で空気中の黄色ブドウ球菌を98.4%低減し、換気に換算して184相当ACHに匹敵する効果が確認されています。
2026年のFar-UVC国際会議では、南アフリカでの結核伝播を約91%低減したとする対照試験や、デンマークの介護施設12施設での6か月対照試験の予備結果も報告されました。
研究段階から社会実装のフェーズに入りつつある、という感触です。
訴求表現の可否 早見表
ここからが本題。マーケティングや商品企画で扱うときに、どこまで言えるのかの話です。
前提:主戦場は薬機法ではなく景品表示法
ここを最初に整理しておかないと、議論がかみ合いません。
UV除菌を搭載した家電の多くは、医薬品でも医療機器でもない雑貨です。なので薬機法が直接かかるわけではありません。効いてくるのは、次の2経路です。
- 薬機法68条(未承認医薬品等の広告禁止):雑貨なのに医薬品・医療機器的な効能効果を標榜すると、ここに触れます。「感染症を防ぐ」がこれ
- 景品表示法5条1号(優良誤認)+7条2項(不実証広告規制):実際の行政処分は、ほぼこちらです
特に押さえておきたいのが不実証広告規制。優良誤認の疑いがあると、消費者庁は15日以内に表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができます。期間内に出せない場合、あるいは出したけれど合理的な根拠と認められない場合、その表示は不当表示とみなされます。
合理的な根拠と認められるには、①提出資料自体の客観性と、②表示の意味との対応が必要とされています。この②が、UV除菌ではかなり効いてきます。
早見表
| 訴求文言 | 可否 | 条件・考え方 |
|---|---|---|
| 「除菌」 | ○ | 雑貨で使える標準的な表現 |
| 「殺菌」 | × | 医薬品・医薬部外品の領域の言葉。雑貨では使用不可 |
| 「試験条件下で〇%減少」 | △ | 試験機関・照射量・距離・時間を明示。かつ実使用環境へ一般化しない |
| 「室内の菌・ウイルスを除去」 | × | 密閉チャンバーの結果を根拠にすると優良誤認。実空間での根拠が要る |
| 「人がいる空間で使える」 | △ | 製品ごとの安全設計と照射量設計次第。国内はJISの22mJ/cm²基準を踏まえて |
| 「人体に安全な紫外線」 | △〜× | 「急性影響が少ないとする研究がある」程度に留めるのが安全 |
| 「感染症を防ぐ」「インフルエンザ対策」 | × | 薬機法68条+景表法。疾病名・予防表現は使えない |
| 菌種名・ウイルス名の明示 | △ | 病原性を持つ菌種名・ウイルス名の名指しは避けるのが安全側 |
| 「UV-Cだから強力」 | × | 波長単独では性能を規定できない(照射量×距離×時間×気流) |
| 「安全基準が緩和されたので安心」 | × | 急性影響の基準が変わっただけ。長期安全性の話にすり替えない |
「殺菌」と「除菌」は使い分ける
基本のキですが、意外と原稿の後半で崩れます。
「殺菌」は医薬品・医薬部外品でしか使えない言葉です。雑貨の広告では「除菌」を使います。ややこしいのは、「殺菌灯」は製品カテゴリの名称として法令上も使われている点。部品名として「殺菌灯」と書くのは問題なくても、効果として「殺菌します」と書くとアウト、という線引きです。
技術資料からコピーしてくると混ざりやすいので、公開前に検索をかけて潰しておくのがおすすめです。
疾病名・菌種名の扱い
抗菌製品技術協議会(SIAA)が公開している加工製品の広告表記ガイドラインでは、非医薬品・非医療機器の製品広告について、こう整理されています。
- 疾病の名称やその予防等の表現は使用できない(「食中毒対策」「感染症対策」「飛沫感染予防」「インフルエンザの予防」など)
- 病原性を有する菌種名やウイルス名を記載したり、それらへの効果を謳ったりしない
「大腸菌を99%除菌」のような、菌種名の名指しそのものが論点になり得るということですね。ここは自主基準ではありますが、業界の実務水準として参照されているので、揃えておいて損はないと思います。
なぜ厳しめに見ておくべきか:措置命令の実例
「そこまで神経質にならなくても」と思われるかもしれないので、実際に何が起きているかを並べておきます。
除菌・抗菌カテゴリは、措置命令の常連です。コロナ禍の2020年度、消費者庁の措置命令は合計33件でしたが、そのうち半分強の20件が、菌やウイルスに関する効果表示を対象としたものでした。
二酸化塩素による空間除菌については、2014年3月に17社25商品へ措置命令が出て自主回収に至り、その後も2021年12月に製造販売業者2社、2024年1月に販売事業者4社と、10年にわたって繰り返し処分が続いています。首下げタイプについては、根拠資料が狭い密閉空間での実験結果であることがほとんどで、風通しのある場所では表示どおりの効果が得られない可能性がある、と消費者庁が明確に指摘しています。
UV除菌にとって一番重い先例
そして、この記事の文脈で一番効いてくるのがこれです。
2023年12月、空気清浄機の製造販売会社2社が景品表示法違反(優良誤認)で措置命令を受けました。「各種雑菌の短時間除菌」「室内に設置すれば除菌・脱臭の効果がある」といった表示が対象です。
注目すべきは処分の理由。消費者庁は、提出された根拠は密閉された空間での結果であり、室内使用での効果を示すものではないと判断しました。
これ、222nmのエビデンスが置かれている状況とまったく同じ構造です。前の章で紹介したチャンバー試験の98.4%低減も、あくまで試験室の条件下での数字。これを根拠に「部屋の空気がきれいになる」と言った瞬間に、上と同じ論点に入ります。
研究の数字は強力ですが、強力だからこそ、表示の意味と根拠の範囲がずれやすい。ここが一番の落とし穴だと思います。
アフィリエイト・レビュー記事も対象になります
最後に、私自身にも刺さる話を。
2021年3月、消費者庁はアフィリエイトサイトの表示について、広告主に対して措置命令を出しました。広告主がアフィリエイトサイトの表示内容を「自ら決定している」と判断された初のケースです。2023年10月からはステルスマーケティング規制も始まっています。
つまり、メーカーの公式サイトだけを整えても足りないということ。タイアップ記事、レビュー、SNSでの紹介まで含めて、表示のトーンを揃えておく必要があります。研究結果の数字と製品訴求を近接配置しない、というだけでもリスクはかなり下がります。
なお、私は弁護士でも薬事の専門家でもありません。上の整理はあくまで、実際の処分事例を並べて自分なりに読み解いたものです。実際の可否判断は、必ず各社の法務・薬事部門にご確認ください。そのうえで、「除菌」と「感染予防」を混ぜない、「急性」と「長期」を混ぜない、「試験条件」と「実使用環境」を混ぜない。この3つを守るだけでも、事故はかなり減ると思います。
身のまわりでの活用事例
・空気清浄機:フィルターで集めた菌やウイルスをUVで除去
・加湿器:Dysonではタンク内の水をUV-Cで除菌し、清潔なミストを放出
・家庭用除菌ライト:小物やスマホの表面をUVで除菌

気づいていただきたいのは、これらはいずれもUVライトが機器の内部にあって、光が外に漏れない設計になっているということ。従来型のUV-Cを使う場合の、これが基本形です。222nmの話は、この「内部に閉じ込める」という前提を外せるかもしれない、というところに価値があります。
余談:EMSと同じ構造だなと思った話
ここは完全に個人的な感想です。
私はもともとEMS機器の商品企画をやっていたのですが、222nmの訴求まわりを調べていて「これ、EMSとまったく同じ構造だな」と思いました。
EMSも、論文で示されている効果はあくまで特定の周波数・出力・貼付位置・時間で実施した試験条件下の話です。ところが訴求の段階になると、条件が抜け落ちて「EMSは効く」という一般論に変換されてしまう。
222nmも同じで、「試験室で99%不活化」が、いつのまにか「この製品を置けば部屋が安全」に化けていきます。
技術の話を訴求に落とすときは、どの条件を落としたのかを自覚しておくことが大事なんだろうな、と改めて思いました。
関連記事:【EMS業界ニュース】最近流行のジェル不要のEMSってなんで使えるの?
よくある質問
Q. 222nmなら、人がいる場所で常時使用できますか?
A. 製品ごとの安全設計と規定照射量によります。波長だけでは判断できないので、導入先ごとのリスク評価が必要です。
Q. TLVが引き上げられたので「安全」と訴求してよいですか?
A. TLVは急性障害に関する許容限界値です。長期安全性を保証するものではありません。また国内のJIS基準はまだ改訂前の水準なので、国内向け表現では特に注意が必要です。
Q. 家庭用ライトを近距離で使えば効果が上がりますか?
A. 近づけるほど曝露量も増えます。自己判断で条件を変えず、取扱説明書に従ってください。
Q. 254nmの製品と、どう差別化して伝えればよいですか?
A. 「強さ」ではなく「どこに置けるか」で差別化するのが筋がいいと思います。254nmは機器内部に閉じ込める前提、222nmは適切なフィルターと照射設計があれば人のいる空間も選択肢に入る。用途設計の違いとして説明するほうが、誇大にならずに済みます。
Q. 製品スペックで最初に確認すべき項目は?
A. 光学フィルターの仕様です。230nmを超える波長をカットできているかどうかで、222nmを名乗る意味があるかが決まります。
まとめ
222nm Far-UVCは、間違いなく有望な除菌技術です。50年ぶりのTLV改訂という事実は、その裏付けが積み上がってきたことの表れだと思います。
ただ、扱う側としては「比較的低侵襲とする研究がある」という表現にとどめておくこと。
そして急性と長期、除菌と感染予防、国際基準と国内基準──この3組を混ぜないこと。ここさえ押さえておけば、technologyとしての魅力はきちんと伝えられるはずです。
今のご時世、紫外線は必要な技術だと思っています。正しい理解と活用ができるように、私も引き続き勉強していきます。
参考
- ウシオ電機 Care222
- ウシオ電機ニュースリリース
- 222nm紫外線を室内で照射した際の眼の長期安全性と病原微生物不活化効果について(ウシオ電機)
- 222nm紫外線の眼に対する暴露限界値の検討と安全メカニズムの解明(島根大学医学部)
- ニチバン 紫外線と除菌の仕組み
※本記事は技術情報の整理であり、特定製品の性能や安全性を保証するものではありません。訴求表現の可否については、各社の法務・薬事部門にご確認ください。
更新履歴:2021年 初出/2026年8月 ACGIHのTLV改訂、電気用品安全法の改正、実環境での検証結果を追記し、全面改稿





